薬を目的の場所=ターゲットにきちんと届けて、効果を増すのがターゲティングです。ターゲティングして薬を届けることで、不必要なところに薬が届いて副作用を起こすことを軽減します。ここではもう一歩踏み込んで、どのようなターゲティングの方法があるか、例をあげて解説します。

ターゲティングのレベル

臓器-細胞-細胞内器官

ターゲットに狙いをつけるといっても、体内に薬が入った後に、どのレベルまでターゲティングできるでしょうか。

たとえば肝臓の病気で薬を飲んだ時に、肝臓に薬が集まるようにする、これが臓器レベルのターゲティングです。

次に肝臓の中のある細胞に薬が集まるようにする、これが細胞レベルのターゲティングです。

さらに、肝臓の細胞の中の、核にターゲティングする、これが細胞内器官のターゲティングです。

現在では細胞の中の小さな器官にまで薬を命中させるところまで研究が進んでいます。当然集中して薬を投下できるのであれば、その分副作用も減らせるということになります。

受動的ターゲティング

毛細血管とリンパ管の違い

粒子の大きさを利用したターゲティング(図解で学ぶDDS参照)

人の体の中の組織の違いを利用して、体内に入った薬を、狙った場所に集めることができます。
たとえば人間の毛細血管壁とリンパ管壁では、毛細血管壁の方が明らかに細いです。そこで薬を包む材料の大きさを、リンパ管には入り、毛細血管には入れない大きさに設計します。この大きさの薬を注射すると、毛細血管には入らず、リンパ管の方へ薬が流れていきます。リンパ管はがんの転移や細菌感染の主な経路なので、化学療法では重要なターゲットとなります。

ターゲットとなる臓器へ薬を移動させるためには、次のように注射する方法があります。

静脈から注射した薬は、心臓→肺→動脈→臓器→静脈という経路をたどります。たとえばこの図では、DDS材料と薬を組み合わせた大きさを5000nm、毛細血管より大きいサイズにします。すると静脈から注射して入った薬は、心臓を通過した後で、肺の毛細血管を通り抜けられず、肺に集まるようになります。

EPR効果

がん細胞へのリポソームの集中(絵で見てわかるナノDDS参照)

受動的ターゲティングの他の例としては、がんの腫瘍がある部位では、血管が未熟で、正常な細胞よりも隙間があるという特徴があります。この性質を利用して、150nm以下のサイズのリポソームであれば、血管の中からがん細胞の組織に移動させることができます。さらに、がん細胞の近辺ではリンパ管も未発達なので、一度がん細胞の周辺に薬を集めると、がん組織内に長くとどまることができます。これをEPR効果といって、多くの抗がん剤で、このEPR効果を利用したターゲティングを行っています。

このように、組織の特徴を利用して、DDS材料の大きさなどを調整し、自然と目標の部位に集まるようにするターゲティングを受動的ターゲティングと言います。

能動的ターゲティング

受動的ターゲティングの薬は実用化されて多くの場面で使われていますが、細胞に集めることまではできても、その中でもっと集中的に患部を狙い撃ちし、副作用を軽減するために、さらに絞り込む、という次世代型の製剤開発が進んでいます。そのための方法が、能動的ターゲティングと言われる方法です。受動的ターゲティングでがん細胞の周りに薬を集めることはできるので、その後がん細胞内へ取り込まれるための工夫をしています。

がん細胞特有のタンパク質を狙い撃ち

たとえば正常細胞にはなく、がん細胞の表面のみにあるタンパク質を認識する抗体と薬を組み合わせます。多くのがん細胞では、「トランスフェリンレセプター」というものが通常細胞よりも過剰に出ることがわかっています。そこで、リポソームにこの抗原に近寄っていく「トランスフェリン」をとりつけます。こうするとまず能動的ターゲティングでがん組織の近くにリポソームは引き寄せられ、そこから「トランスフェリン」が「トランスフェリンレセプター」に近寄っていき、がん細胞を狙い撃ちします。

この療法は、その性質上、ミサイル療法とも言われます。ミサイルが標的を認識してそれに向かって飛んでいくように、目標とする場所に自ら向かっていくからです。

続いて、薬の放出速度をコントロールする、コントロールドリリースについて説明します。

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参考文献

  • 橋田充、高倉善信:「図解で学ぶDDS」 じほう(2010年)
  • 永井恒司:「DDSの基礎と開発」シーエムシー出版(2006年)
  • 岩田博夫、加藤功一、木村俊作、田畑泰彦:「バイオマテリアル」丸善出版(2013年)
  • 田畑泰彦:「絵で見てわかるナノDDS」メディカルドゥ(2007年)