成人の血管は、まっすぐにつなげると、およそ10万kmの長さになります。血管は通常、成人になってから伸びることはありません。各臓器に酸素や栄養素を運ぶものが動脈、臓器から二酸化炭素や老廃物を運ぶものが静脈です。ストレス、粗悪な食生活、運動不足、喫煙など、乱れた生活習慣が続くと血流が悪くなり、さらに状態が悪化すると、血管が詰まってしまいます。。脳の血管がつまると脳梗塞、心臓の血管がつまると心筋梗塞となり、血液が行き届かなくなるので組織の細胞が死んでしまいます。こういったことが起きないために、生活習慣は絶えず見直す必要があります。

人工血管

人工血管血管が詰まったり、壊死してしまった場合には、人工血管を埋め込みます。しかし人工物であるため、10年20年と使い続けるうちに詰まってしまったり、継ぎ目が狭くなったり、感染が心配であったりして、再移植を行う必要性が出てきます。再生医療では、人工血管ではなく、自らの細胞をもとに血管を再生して用いることを目指しています。

足の血管再生

動脈硬化動脈が詰まり、血液が行き届かなくなる病気を末梢性動脈疾患と言います。血流が悪くなり、脚が痛くなってきて、次第に歩くこともできなくなります。ひどくなると血液の行き届かなくなった組織が腐り、切断しなければ命が助からなくなります。また、バージャー病という難病も、原因は不明ですが、動脈に炎症を起こし、血液が行き届かなくなる病気です。喫煙者でストレスの多い男性がかかりやすい病気です。
治療法は、運動で血流をよくする、薬で血液を流れやすくする、血管を広げる、、別の血管をつないで血流を増やすバイパス手術を行う、などがあります。それでも手遅れの場合は、壊死が広まらないように切断するしか選択肢はありませんでした。
血管を再生させる方法を模索していく中、1997年、血管を作り出す細胞が存在するという論文が掲載されました。具体的なメカニズムは明らかにはなっていませんが、患者の腸骨から骨髄を抜き取り、これを脚に注入すると、確かに血管が再生されることが確認されています。現在この治療法は保険適用を受けられるようになっています。この方法で、心臓や脳でも、同じように血管を再生させる治療が試みられています。

DDSの徐放技術による血管再生

血管新生ところで、骨髄の細胞を移植することで血管が再生することは確認できましたが、移植した細胞の70%は3日ほどで酸素不足などによって死滅しています。このことから、細胞が血管をつくるという説ともう一つ、細胞が酸欠によって分泌した物質によって血管ができているのではないかという説もあります。細胞は、酸素がないと生きれないため、酸素不足になると、酸素を含んだ血液を求めて、自らの細胞に至る血管の道を生じさせようとします。たとえば、コンタクトレンズを長時間していると、酸素不足から目が充血しますが、これは、酸素不足に陥った目の細胞が、酸素を含んだ血液を求めて、血管の道を生じさせることから起こると考えられています。

もう一つ、骨髄細胞を持ってきて血管を生じさせる方法と並行して、今ある組織から新しい血管を生み出す試みがなされています。
細胞組織が酸欠状態になると、血管をつくる細胞増殖因子がうまれることがわかっています。鉄キレート剤のDFOという成分が細胞の低酸素状態を作り出すことができるので、これを細胞に投与して、血管を再生させます。DFOは体内に長時間とどまることができないのが難点ですが、これをDDS材料のハイドロゲルに包んで徐々に放出するようにすることで、血管を再生することができるようになりました。また、血管新生作用をもつbFGFという細胞増殖因子をハイドロゲルで徐放することによっても、血管を再生できることがわかっています。

血管再生を止めることによるがん治療

がん通常、成人になってから血管は伸びませんが、がん細胞は増殖する時に血管を伸ばし、栄養分を送り込もうとする働きをしていることがわかりました。そこで、このがん細胞が新しい血管をつくることを防ぎ、がんを兵糧攻めにして進行を止める治療法の研究が進んでいます。

続いては、骨の再生です。

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参考文献

  • 八代嘉美、中内啓光:「再生医療のしくみ」日本実業出版社(2006年)
  • 田畑泰彦、岡野光夫:「ティッシュエンジニアリング2007」メディカルドゥ(2007年)
  • 田畑泰彦:「進み続ける細胞移植治療の実際上下巻」メディカルドゥ(2008年)
  • 田畑泰彦:「ますます重要になる細胞周辺環境の最新科学技術」メディカルドゥ(2009年)
  • 岩田博夫、加藤功一、木村俊作、田畑泰彦:「バイオマテリアル」丸善出版(2013年)