食べ物の消化や血糖値をコントロールしている膵臓。この臓器の機能不全で困っている人は多くいます。ここでは膵臓の働きについてみていきます。

膵臓の働き

膵液

膵蔵はくさび型の臓器で、成人で長さ15㎝くらいになります。膵臓は、食べた物を強力に消化する「膵液」を分泌します。膵液は、食事をすると分泌されますが、頭の中で食べ物を想像しただけでも、膵液が出ます。膵液には、三大栄養素を消化する酵素が含まれていて、トリプシンがタンパク質、アミラーゼが炭水化物、リパーゼが脂肪を分解します。その後、小腸でさらに細かく分解して吸収します。

膵臓の体積の95%は主に膵液を発する部分で、残りの5%は主に血糖値(血液中のブドウ糖の濃度)をコントロールする部分です。

血糖値は、低すぎると脳の働きが鈍くなり、高すぎると血管や神経が傷ついてしまうので、常に適正な範囲内に調節する必要があります。この調節の役割を担っているのが、血糖値をあげる「グルカゴン」、血糖値を下げる「インスリン」というホルモンで、膵臓の5%の部分でこれを分泌します。95%のほかに、5%の細胞の塊が島のように浮いている様子から、発見者のランゲルハンスの名前をとって、「ランゲルハンス島(膵島)」と呼ばれています。

インスリン

インスリンの働き食後は血糖値が上がります。この時、膵臓のランゲルハンス島からインスリンが分泌されると、肝臓は血糖からグリコーゲンをつくり、脂肪組織や筋肉でも糖分の取り込みが行われ、結果として血糖値が下がります。このインスリンが分泌できなくなったり、効き目が悪くなったりすると、血糖値が下がらず、血液や尿の中の糖分が高くなります。これが糖尿病です。

糖尿病

糖尿病糖尿病の5%は1型糖尿病と言われるもので、自らの免疫が膵臓を攻撃し、インスリンを分泌できなくなる病気です。肥満と関係なく、若年層に多く見られ、この場合はインスリンを絶えず注入する必要があります。95%の大多数を占めるのが2型糖尿病と言われるもので、肥満の人が多く、過食や運動不足といった生活習慣から起こると言われています。症状としてなかなか表に出てこないので、2型糖尿病と診断されたときには、インスリンの分泌機能が半分くらいにまで低下していることが多くあります。

インスリンとDDS

DDSとインスリン

インスリンの分泌ができなくなったり、機能が極端に低下した場合、インスリンを外部から補うか、インスリン分泌を促進する物質を投与する治必要があります。インスリンは胃で消化されやすく、血液中に取り込まれにくいので、飲み薬ではなく、注射で直接血液に投与されてきました。近年DDSの技術が発達し、インスリンを胃でも溶けない小さなカプセルに入れ、血液中でインスリンを放出するようにしたDDS製剤の開発が進んでいます。患者は注射器から解放されて、飲み薬でインスリンを補うことができるようになる見込みです。また、皮膚に貼り付けて皮膚から吸収するタイプのコントロールドリリース型のインスリンも研究されています。

膵臓病

アルコール膵臓の病気は糖尿病だけではなく、膵炎という炎症からくる病気があります。これは、大半がアルコールのとり過ぎによって起こります。アルコールのとり過ぎは肝臓だけではなく、膵臓に負担をかけます。普段、膵液は十二指腸に入ることで食物を溶かす強力な機能を発揮するのですが、急激にお酒を飲むと、十二指腸に膵液が送られずに詰まってしまったり、自らの膵液によって膵臓自体を溶かしてしまうことがあります。自らを溶かした膵臓は、炎症を起こして、有害物質を生じて血中に放出します。その影響が、時には肝臓や腎臓、心臓にまでおよび、時には命を失うことさえあります。

膵臓がんは、喫煙、アルコール、高タンパクの食事が原因とみられています。膵臓がんは進行速度が非常に速く、致死率が非常に高い病気です。

膵臓移植

インスリンを分泌することができなくなった時には、インスリン注射を1日に4回以上も投与する必要があります。しかし、注射による血糖コントロールは、糖尿病専門医の管理をもってしても困難を極め、高血糖発作や低血糖発作を繰り返し、命を脅かすことが多々あります。また、たとえインスリン注射によって血糖コントロールできたとしても、動脈硬化などの合併症が徐々に悪化し、脳梗塞や心筋梗塞のリスクが非常に高くなります。この問題を解決するために、臓器移植が試みられてきました。

膵島移植

インスリンを分泌するランゲルハンス島の細胞のみを移植して、体内でインスリンを再び分泌できるようにするのが膵島移植です。摘出した膵島を患者の膵臓に移植してもうまくインスリンを分泌できなかったのですが、肝臓に移植するとインスリンが分泌できるようになるという報告があり、この方法が増えています。手術ではなく点滴で肝臓に注入するので負担が少なくて済みます。しかし、1度の移植でインスリン注射から抜け出すことは難しく、2回3回と移植する必要があります。また、3年、5年間経つとインスリンが分泌できなくなり、根本的な解決には至っていません。

膵臓自体を移植する場合、膵臓移植の待機者のほとんどは、糖尿病が原因のため、膵臓と共に腎臓も移植が必要です。そこで膵臓と腎臓を同時に移植するのが膵腎同時移植です。この方法で、80%以上の患者がインスリン注射と透析から解放されています。ただしドナーは絶対的に不足しているのと、他人からの移植となるので、免疫抑制剤は一生飲み続けなければいけません。

膵臓の再生

膵臓の再生

そこで、やはり自分の細胞から臓器を培養し、インスリン注射と透析治療から抜け出せるようになることが待ち望まれています。多くの研究者がES細胞やiPS細胞を使って人の膵島の作製に挑んでいます。2013年の3月にヒトiPS細胞で膵島を作製し、これをマウスに移植したら、マウスの血糖値を元に戻せる、というところまで実現しました。膵島移植で使える細胞をつくり、ゆくゆくは膵臓そのものをiPS細胞でつくるという方向へ一歩ずつ着実に歩んでいます。

続いて神経の再生です。

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参考文献

  • 八代嘉美、中内啓光:「再生医療のしくみ」日本実業出版社(2006年)
  • Newton 別冊:「夢の再生医療を実現する」ニュートンプレス(2012年)
  • 京都大学医学部付属病院 膵島移植 http://www.kuhp.kyoto-u.ac.jp/~transplant/islet/islettx.html

膵臓の再生

 

膵臓の働き

膵臓は成人で長さ15 cm程度のくさび型の臓器です。膵臓は食べた物を強力に消化する「膵液」を分泌します。食べ物を食べると分泌されますが、頭の中で食べ物を想像しただけでも、この膵液が出てきます。この膵液には三大栄養素を消化する酵素が含まれていて、トリプシンがタンパク質、アミラーゼが炭水化物、リパーゼが脂肪をおおまかに分解します。その後小腸でさらに細かく分解して吸収します。

 

膵臓の体積の95%は主に膵液を発する部分で、残りの5%は主に血糖値(血液中のブドウ糖の濃度)をコントロールする部分です。

 

血糖値は低すぎると脳の働きが鈍くなり、高すぎると血管や神経が傷ついてしまうので、常に適正な範囲内に調節する必要があります。この調節の役割を担っているのが、血糖値をあげる「グルカゴン」、血糖値を下げる「インスリン」というホルモンで、膵臓の5%の部分でこれを分泌します。95%の中に5%の細胞の塊が島のように浮いている様子から、発見者のランゲルハンスの名前をとって、「ランゲルハンス島(膵島)」と呼ばれています。

 

インスリン

食事をした後には血糖値が上がります。この時、膵臓のランゲルハンス島からインスリンが分泌されると、肝臓は血糖を使ってグリコーゲンをつくり、脂肪組織や筋肉でも糖分の取り込みが行われます。このようにして血糖値を下げる働きをしています。このインスリンを分泌できなくなったり、効き目が悪くなると、血糖値が下げられなくなり、血液や尿の中の糖分が高くなる、これが糖尿病です。

 

糖尿病

糖尿病の5%1型糖尿病と言われるもので、自分の免疫が膵臓を攻撃し、インスリンを分泌できなる病気です。インスリンを絶えず投入する治療が必要になります。若年層に多く、肥満とは関係ありません。95%の多数を占めるのが2型糖尿病と言われるもので、肥満の方が多く、過食や運動不足といった生活習慣から起こると言われています。症状としてはあまり表に出てこないので、2型糖尿病と診断されたときには、インスリンの分泌機能が半分くらいにまで低下していることが多くあります。

 

インスリンとDDS

インスリンの分泌ができなくなったり、機能が極端に低下した場合は、現状インスリンを外部から補うか、分泌を促進する物質を投与する治療がされています。インスリンは胃で消化されやすく、血液に吸収されにくいので、これまで飲み薬ではなく、注射して直接血液に投与していました。患者自身が1日に何度も注射しなくてはいけないものでした。現在ではペン型の注射器になっています。近年DDSの技術が発達し、インスリンが胃で溶けない小さな分子カプセルに入れ、血液中でインスリンを放出するようにしたDDS製剤の開発が進んでいます。患者は注射器から解放されて、飲み薬でインスリンを補うことができるようになる見込みです。また、皮膚に貼り付けて皮膚から吸収するタイプのコントロールドリリース型のインスリンも開発中です。

 

膵臓病

糖尿病以外の病気では、膵臓には他にも炎症を起こしてしまう膵炎があります。これは大半がアルコールの取り過ぎによって起こります。アルコールの取り過ぎは肝臓だけではなく、膵臓に負担をかけます。急激にお酒を飲むと、普段膵液は十二指腸に入ることで食物を溶かす強力な機能を発揮するのですが、十二指腸に送られず詰まってしまったりすると、自分の膵液が膵臓自身を溶かしてしまうということが起きます。ひどい時にはその後肝臓や腎臓、心臓まで影響し、死んでしまうこともあります。

 

そして喫煙、アルコール、高タンパクの食事が原因とみられる膵臓がん。膵臓がんは進行速度が非常に速く、致死率が非常に高い病です。

 

膵臓移植

インスリンを分泌することができなった時には、インスリン注射を1日に4回以上も投与する治療となります。しかし、注射による血糖コントロールは、糖尿病専門医の管理をもってしても困難を極め、高血糖発作や低血糖発作を繰り返し、命を脅かすことが多々あります。また、たとえインスリン注射によって血糖コントロールできたとしても、動脈硬化などの合併症が徐々に悪化し、脳梗塞や心筋梗塞のリスクが非常に高くなります。そこで根本的な解決のために、臓器移植が試みられてきました。

 

インスリンを分泌するランゲルハンス島の細胞のみを移植して、体内でインスリンを再び分泌できるようにするのが膵島移植です。ただし膵臓に移植してもうまく分泌できなかったので、肝臓に移植するとインスリンが分泌できるようになるそうです。しかし1度の移植でインスリン注射から抜け出すことは難しく、23回と移植する必要があります。また、3年、5年間経つとインスリンが分泌できなくなり、根本的な解決には至りません。

 

膵臓そのものと腎臓を同時に移植するのが膵腎同時移植です。この方法であれば80%以上の患者がインスリン注射と透析から解放されています。ただし他人からの移植となるので、免疫抑制剤は一生飲み続けなければいけません。

 

膵臓の再生

そこでやはり自分の細胞から臓器を培養し、インスリン注射と透析治療から抜け出せるようになることが待ち望まれています。多くの研究者がES細胞やiPS細胞を使って人の膵島の作製に挑んでいます。2013年の3月にヒトiPS細胞で膵島を作製し、マウスに移植して血糖値を元に戻すというところまで実現しました。膵島移植で使える細胞をつくり、ゆくゆくは膵臓そのものをiPS細胞を使ってつくるという希望へ、一歩一歩着実に歩んでいます。

 

続いて神経の再生です。