ここでは肝臓の再生について解説します。

肝臓の役割

肝臓肝臓は重さが1kg超もあり、成人の臓器では最も重く、大きい臓器です。肝臓の働きは500以上あると言われており、人工的に置き換えることが非常に難しい臓器です。代表的な機能は代謝、貯蓄、解毒です。肝臓は食べた物を消化し、体が利用しやすい栄養分へと変換します。また、それらの栄養を貯蔵し、いざというときのために備えます。そして、不要なものを排泄したり、体内に入ってきた毒素を解毒します。様々な役割をこなしているため、肝臓が病気になると体全体に影響します。

肝臓の再生能力

肝臓の再生肝臓はもともと再生能力が備わっている臓器で、3分の1まで切除しても、1年もするともとの大きさに戻るという性質を持っています。そのため、肝臓の病にかかった時に、生体肝移植といって、生きている家族から肝臓の一部を切り取ってもらって移植するということができるのです。提供する方の肝臓も再生するからです。

肝臓病

肝臓病の3大原因はウイルス、アルコール、肥満です。

肝炎ウイルス

日本にはB型肝炎ウイルス感染者が約150万人、C型肝炎ウイルス感染者が約200万人います。これらのウイルスは血液を通して感染します。歯ブラシやカミソリを通して感染することもあります。かつて、血液製剤にC型肝炎ウイルスが含まれて1万人以上感染した事件もありました。

アルコール依存症

アルコール依存症の患者は日本に230万人いると言われており、26人に1人がアルコール依存症という計算になります。アルコール依存症は「否認の病気」と言われており、本人は依存症と思ってはいけないけれども、知らず知らずのうちに依存していて抜け出せない状態になっています。精神的にもうつ病につながったり、身体的にも依存し、アルコールが切れてくると脈拍が速くなったり、発汗、イライラ、手の震えといった症状が出るようになります。アルコールの分解処理能力がすでにいっぱいになっているのに、アルコールをとり続けると脂肪肝となります。しかしこの時点では自覚症状はほとんどありません。徐々に肝臓が炎症を起こしていきます。アルコールはアセトアルデヒドという物質に変換しますが、この毒性により、肝臓の細胞が繊維状になってしまいます。

肝炎、肝硬変、肝がん

また、肥満者の約80%は脂肪肝となっています。肥満や糖尿病の人に起こる炎症や、細胞の繊維化から、肝硬変になっていくことも知られてきました。慢性になってくると肝硬変へと病状が悪化し、放っておくとさらに肝がんへと進行していきます。
肝臓は「沈黙の臓器」とも言われており、症状が出て気づいた時にはすでにだいぶ病状が進行しているということが多い臓器です。

肝移植

生体肝移植

肝臓の病気がひどくなると、肝臓を移植するしか現状は手立てがありません。しかし移植はドナー不足の問題と、他人の臓器をもらいうけた場合、免疫による拒否反応が出るため、免疫抑制剤を飲み続けなければいけないといった問題があります。免疫の働きも弱くなり、合併症のリスクがを伴います。

肝臓の再生

肝細胞シートこういった問題に対して、本人の細胞を使った再生医療が望まれています。肝臓病の患者への再生医療として、心臓の再生で記した「細胞シート」を使ったものの研究が進んでいます。細胞シートを重ねて人間の細胞から小さな肝臓をつくり、マウスの背中に移植しました。すると、マウスの血中に人間のたんぱく質が出続けることが確認されました。マウスの肝臓から人間のたんぱく質が出るはずはないので、これは移植した「小さな肝臓」がマウスの体内で生きて機能していることを意味します。細胞シートを使った「小さな肝臓」を患者の欠損した肝臓に移植することで、機能を発揮できるのではないかと研究を進めています。まだ動物実験の段階ですが、今後の研究に、患者の肝臓の再生への期待が寄せられています。

実験室

また、iPS細胞を使って肝臓をつくり出す研究が各地で行われています。現在は2~4mmほどの非常に小さな肝臓をシャーレでつくることができていますが、小さいながらも肝臓の特徴的な構造ができているとのことです。この細胞を使って薬の評価を行ったり、難病の原因究明に使ったり、移植医療として使ったり、様々な用途に広がりを見せています。

続いて腎臓の再生についてです。

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参考文献

  • 八代嘉美、中内啓光:「再生医療のしくみ」日本実業出版社(2006年)
  • 岡野光夫:「『細胞シート』の奇跡」」祥伝社(2012年)
  • Newton 別冊:「夢の再生医療を実現する」ニュートンプレス(2012年)