人の皮膚から細胞を取り出して、iPS細胞をつくり、その人の臓器をつくって本人に移植する―SF映画では臓器を透明の容器で培養している様子がよく出てきますが、このように3Dの臓器を作製して治療に活かすようになるのは、もう少し先の話になりそうです。しかしその手前の、iPS細胞を細胞のまま移植するという治療法が、近いうちに実現しようとしています。
網膜の再生

iPS細胞を使った再生医療で最初に実現されるといられているのが網膜の再生です。網膜は、細胞ががん化するリスクも低く、近々、網膜の難病治療に関して臨床試験が行われます。これは、患者のiPS細胞から、シャーレ内で網膜色素の上皮細胞のシートを作り、。これをペタンとはるという治療です。網膜をドーム状に水ぶくれさせて、網膜と眼球の壁の間にシート状の細胞を入れこみます。網膜に穴をあけて、そこからチューブで注入するイメージです。その後水ぶくれ状態を戻すと、ペタンとひっついて動かなくなります。細胞が生着すれば、なじんで再生されるというものです。難病で目が見えなくなり、光を失っていく患者が見えるようになる。奇跡的なことが起きようとしています。
心臓の筋肉を修復

細胞シートについて

細胞をシャーレの中でシート状に培養し、体の中で傷ついて細胞が不足している部分に貼り付けて使えるものをつくっています。これはiPS細胞が出る前からすでに研究が進んでいた分野です。細胞を初期化しなくとも、口内の粘膜の細胞を角膜移植して視力を回復させたり、太ももの筋肉の細胞を心臓の筋肉に移植して生着させるなど、すでに細胞シートをつくって移植するという技術は実用段階にきています。
血小板の作製

輸血用の血液は常に不足しています。血液の細胞には寿命があり、長期間保存しておくことができません。特に血小板については4日しか保存できません。そこで、iPS細胞から血液の細胞をつくり、輸血用として安定供給する研究が進んでいます。これによって、輸血による感染症の心配のない、より安全な血液を供給することができるようになると期待されています。
脊髄損傷の治療

脊髄損傷の原因は、スポーツ外傷や交通事故などで、神経細胞の集まった脊髄が傷ついてしまうことです。日本で10万人以上患者がいると言われています。損傷後4週間以内が再生医療のリミットです。iPS細胞で神経幹細胞を培養し、移植しますが、本人の細胞からiPS細胞をつくっていると間に合いません。そこで、あらかじめ他の人の細胞でiPS細胞をつくっておき、いつでも似た型のiPS細胞を取り出せるiPS細胞バンクが提唱されています。そうすれば、いつ患者が運び込まれてもiPS細胞を投与することができます。現在サルに神経幹細胞を移植する実験で、飛び回ったりするところまで回復しています。安全性の確認が必要ですが、ヒトに応用される日も間近に迫っています。
この他様々な分野でiPS細胞を使った再生医療が期待されています。iPS細胞の登場以前からも再生医療の分野では研究が進んでおり、詳しくは再生医療のカテゴリーで扱います。
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