人間の情報の8割は目から入ってくると言われています。そのため、視力を失うと生活そのものが多大な影響を受けます。ここでは目の再生について見ていきます。

目の構造

角膜

目の構造の中で、最も外側に位置しているのが角膜です。透明な膜で黒目の部分を覆っていて、外から光を取り入れます。カメラでいえばレンズにあたります。わずかな変形や濁りが、視力に大きく影響します。角膜は透明で、血管も皮膚もありません。皮膚と同じように、外部からの細菌やウイルスの侵入を防ぐバリアゾーンとなっています。そのため、角膜が傷つくと、そこから細菌などが侵入してきてしまいます。角膜は大切な保護膜であり、高性能なレンズでもあります。

網膜

網膜は、眼球の内側に薄いお椀のようにはりついています。角膜から入ってきた光を受け取って信号に変え、神経を通して脳に映像を伝えています。

コンタクトレンズ

コンタクトレンズコンタクトレンズは角膜に接触(コンタクト)させて使用するレンズです。眼鏡をかける必要がなくなるので大変便利なものですが、目の病気の原因で増えているのが、コンタクトレンズによる病気です。角膜には血管がなく、外から酸素を取り入れています。コンタクトレンズは角膜の上からかぶさるので、酸素の透過性が重要になります。最近のレンズの材質は酸素を通すようになってきたのですが、コンタクトレンズをつけたまま寝てしまうと角膜の細胞に酸素を供給できなくなり、細胞がダメージを受けます。レンズがはりついたような痛みがあります。そして、レンズの定められた装着時間を超えると、酸素を補うために角膜に本来あってはならない血管が伸びてくるのです。血管は一度伸びてしまうとなくなりません。また、洗浄が不十分だと角膜感染症を引き起こしてしまいます。ひどい時にはこれが原因で失明に至ります。コンタクトレンズの使用は必ず装用時間や洗浄に関する決まりを守る必要があります。

レーシック

レーシック

レーシックは角膜矯正手術のひとつで、角膜にレーザーを照射し、角膜の曲率を変えることで視力を矯正する手術です。一度角膜の表面を薄くスライスしてめくります。角膜の中心にある角膜実質層にレーザーを照射し、一部を蒸発させ、再び角膜のスライスした蓋を元に戻します。ほとんどの場合、視力が1.0以上に回復します。

角膜の病気

最近増えているのはコンタクトレンズの角膜感染症です。この病気にかかる30歳未満の9割がコンタクトレンズ使用者で、装用時間や洗浄の決まりを守らないために起きています。
角膜感染症角膜感染症の主な症状は、痛み、充血、涙目、視力低下などですが、細菌やウイルスが除去されればいずれ痛みや充血はなくなります。しかし感染が長引くと、本来血管のない角膜に、酸素を供給しようとして血管が伸びてきます。放置すると黒目の部分が濁ってしまい、回復しない場合には角膜移植をしないと失明してしまいます。

角膜移植

アイバンク角膜が傷や感染症などによって透明でなくなったり、変形して網膜に正しく光を送ることができなくなった場合に、角膜移植の手術を行います。角膜は亡くなった方から提供を受けたものを移植します。日本にはアイバンクという制度があり、角膜移植を希望する順に提供されるのですが、移植待機者が5,000人に対して、提供できる角膜の数は1,000個で、患者に対してドナーの数が圧倒的に少ない状況にあります。また、角膜移植は他者からの移植になるので、免疫拒絶反応が起きるという問題があります。この拒絶反応を抑えるため、免疫抑制剤を飲み続けなければいけなくなります。

細胞シート

細胞シート現在、自らの細胞を培養して移植する再生医療が期待が集まっています。すでに大阪大学では口の中の粘膜の細胞を細胞シートを培養して、角膜上皮として移植する手術を20例以上行い、成功しています。この手術は、自らの細胞を使うので、免疫拒絶反応がありません。また、細胞シートを角膜に載せるだけで生着するので、これまでのように縫合技術者の熟練度を問う必要がなくなり、感染症のリスクも、縫合によらない分小さくなりました。

網膜の病気

全盲現在日本の失明原因で多いのは、上から順に、緑内障、糖尿病性網膜症、網膜色素変性症、加齢黄斑変性です。緑内障以外は網膜の病気です。

iPS細胞を使った移植

iPS細胞移植

近いうちに、加齢黄斑変性に対して、iPS細胞を使った再生医療の臨床試験が始まります。人に対してiPS細胞を使う初めてのケースとなり、世界中で注目されています。患者の皮膚からiPS細胞を作製し、網膜の細胞のシートをつくります。これを網膜の真ん中の直径2mm程にあたる「黄斑」に移植します。このような再生医療によって、これまで視力を失っていた人が、回復するようになる可能性が出てきています。

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参考文献

  • 八代嘉美、中内啓光:「再生医療のしくみ」日本実業出版社(2006年)
  • 田畑泰彦:「ここまで進んだ再生医療の実際」メディカルドゥ(2003年)
  • 田畑泰彦:「進み続ける細胞移植治療の実際上下巻」メディカルドゥ(2008年)
  • Newton 別冊:「夢の再生医療を実現するiPS細胞」ニュートンプレス(2012年)