超ミクロの世界で、すごい技術の開発が進んでいます。

DDSとはドラッグデリバリーシステム(Drug Delivery System)の頭文字をとった略称です。

ドラッグデリバリーシステムという考え方は、今から20年ほど前(意識され始めたのは1970年代)から研究されてきました。DDSは、「Drug」を体内で精密にコントロールすることによって、必要な場所に、必要な量を、必要なタイミングで送り込み、最高の効果を得ることを目的とした、投与に関する概念なのです。

元々、薬物治療の方法論として研究されたDDSですが、最近では様々な分野において、必要不可欠な基盤技術になりつつあります。ドラッグデリバリーシステム(DDS)は、今後いっそう注目を集めることが予想されます。

ドラッグデリバリーシステムの目的

どのような成分が体によいのか、この成分はがんに効く、この食べ物をとるとお肌に良い、そういった研究は日々行われています。しかし、そういった有効成分を私達が食べた時に、どのように体内に吸収されて、効力を発揮するのでしょうか。口から入ったものは、食道を通って、胃の中に1~3時間、小腸に3~5時間、大腸に20時間とどまります。有効成分は、目的の場所まで届いて初めて効力を発揮しますが、投与された有効成分が、長い長い体の中の旅を経て、どこに到達するのか、成り行き任せなところがあります。

ドラッグデリバリーシステムは、薬を体内の目的の細胞までしっかりと届け、不必要なところには届かないようにします。しっかりと目的の細胞まで薬を届けることで、わずかな量の薬で効き目をよくすることになり、それは副作用を軽くする、ということにつながります。また、必要なタイミングで薬が届くようにしたり、薬を長く患部の近くにとどまらせたりして、薬の効果を持続させます。

このように、ドラッグデリバリーシステムは薬の効き目を最大限に発揮することを目的としています。

0.5%

薬が患部に届くのはわずか0.5%

体にいい有効成分はたくさん発見されています。しかし、体内に取り込まれた有効成分が、目的とする細胞まで届く割合がどれくらいかというと、実は0.5%程度しかありません。

なぜこの程度しか届かないのでしょうか?人間の体には水分があるし、油分があるし、熱もあります。有効成分を飲んでも途中で薄まったり、他のものと合成して違う物質になってしまったり、体の中の免疫機能によって、異物として取り除こうとしたり、不要なものは排泄したりします。そのため、0.5%しか有効成分を目的の細胞に作用させるために、最初に大量に摂取せざるを得ない現状があります。

抗がん剤の副作用

副作用に悩む女性

がん治療に使われる抗がん剤は、がん細胞を縮小させる働きがあります。経口で摂取された抗がん剤は、体内を通過して、わずか0.5%が目的のがん細胞に届きます。0.5%ががん細胞に届くと、それでもがん細胞は縮小します。

つまり、抗がん剤は、それだけ強い毒性をもっています。抗がん剤の0.5%が目的のがん細胞に届いたとすると、残りは体外に排出されるか、正常細胞が受け止めます。その結果、正常細胞の細胞分裂が止まります。細胞分裂が止まると、髪の毛が生えてこなくなったり、唾液も出なくなったり、肌が荒れたり、様々な副作用を伴います。

だから、がん細胞にピンポイントで薬を届け、副作用を減らそう、0.5%の到達率を、1%にしよう、1.5%にしよう、2%にしよう、そのようにドラッグデリバリーシステムは発展してしてきました。

医薬品開発の歴史とドラッグデリバリーシステム

医薬品開発の歴史

医薬品開発の歴史の図(「図解で学ぶDDS」参照)

こちらは医薬品と剤形の開発の歴史です。医薬品の歴史は古代からありますが、18世紀以前まではハーブ等の薬草など、天然のものから作っていました。19世紀から天然のものから有効成分を抽出して化学物質として扱うようになり、化学合成によって薬を開発してきました。薬の形もカプセル、錠剤、注射など様々ですが、このように歴史を見てみると、ドラッグデリバリーシステムの考え方が出てきたのはつい最近のことです。

それでは次に、ドラッグデリバリーシステムのメリットについて解説します。

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参考文献

  • 橋田充、高倉善信:「図解で学ぶDDS」 じほう(2010年)
  • 永井恒司:「DDSの基礎と開発」シーエムシー出版(2006年)
  • 岩田博夫、加藤功一、木村俊作、田畑泰彦:「バイオマテリアル」丸善出版(2013年)