2006年8月に「iPS細胞(人工多能性幹細胞)の作製が発表されて以来、iPS細胞の研究は、医療分野での実用化に向けて驚異的なスピードで進められています。このiPS細胞を医療に実用化する上でも、DDSの技術は非常に重要な役割を果たします。以下の記事はDDSとiPS細胞との関わりについての記述です。

iPS細胞とは

赤ちゃん

私達人間の体を作るたくさんの細胞は、たった1つの受精卵から生まれています。

受精卵がどんどん増殖して大人の細胞になり、現在の体を作り出しています。この細胞が増殖するプロセスは、1個の受精卵が2個になり、2個が4個になり、4個が8個になり、8個が16個になり・・・と増えていき、100を超えたあたりから、それぞれの細胞は目や鼻、耳、血管、皮膚、心臓、など様々な人間の体を構成する役割に変化していきます。

そして1度役割が決まってからは、細胞は元の状態に戻ることはできないと考えられていました。つまり、目の細胞が鼻の細胞になることはできないし、手が足の細胞になることはできない、ということです。

ところが、この元に戻ることができないはずの細胞に、ある4つの遺伝子を入れることによって、役割が決まる前の様々な形に変化できる状態となり、別の役割になることができる、多能性細胞ができました。これがiPS細胞です。いろいろな細胞になれる能力のある細胞という意味で、人工多能性細胞と言います。

京都大学の山中教授が発表し、この発見でノーベル賞を受賞しました。

医療への利用

移植手術

iPS細胞の技術を用いると、腕の細胞を取り出し、遺伝子を導入して万能の状態に戻し、この万能細胞を別の臓器の細胞として育て、治療に役立てるといったことが可能になります。

膵臓の細胞を作って病気の部分に移植する、脳の病気、背骨の怪我の治療に用いる、神経を育てて治すといった研究がなされています。

近々、加齢黄斑変性(網膜が老化で傷み、視力が落ちる病気)にiPS細胞を使って移植治療を行う計画があり、世界中から注目されています。

DDS × iPS細胞

iPS細胞移植

DDS技術は、このiPS細胞を使った医療でも重要な役割を果たすと期待されています。たとえばiPS細胞で目的の臓器の細胞をつくったとします。しかしその細胞を注射して注入するだけでは、細胞は生着しない可能性があります。細胞が定着するためには、細胞が生きられる環境と、細胞のエサとなる細胞増殖因子などが必要となります。しかしこの細胞増殖因子は、注射するだけでは体内に長くとどまれないことが難点です。細胞増殖因子を、DDS技術を使って徐放し、細胞がしっかり生着するように支援する必要があります。DDS技術は生着率を向上させ、治療効果を増強するものとして期待されています。

遺伝子治療 × DDS

近年、生命科学分野が発展したことにより、様々な病気の発症や進行のメカニズムが、遺伝子レベルで明らかになってきています。遺伝子の異常を解明し、体内に遺伝子を入れることによって治療する動きも活発になっています。この遺伝子を体内に入れるためには、ターゲットとなる細胞の核に遺伝子を入れる必要があります。ここでもDDSのターゲティング技術が生かされ、ターゲットとなる細胞の核に、必要な遺伝子を配達する研究が活発に行われています。

遺伝子治療

DDS技術は、今後の医療の発展において、新分野の成功の鍵を握るキーテクノロジーとして期待されています。

iPS細胞について、詳しくはiPS細胞のカテゴリーに記載しています。こちらもぜひご覧ください。

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参考文献

  • 橋田充、高倉善信:「図解で学ぶDDS」 じほう(2010年)
  • 永井恒司:「DDSの基礎と開発」シーエムシー出版(2006年)
  • 岩田博夫、加藤功一、木村俊作、田畑泰彦:「バイオマテリアル」丸善出版(2013年)
  • Newton 別冊:「夢の再生医療を実現するiPS細胞」ニュートンプレス(2012年)