ドラッグデリバリーシステムの考えのもと、実際の薬を飲んだ時に、バリアゾーンを通過させて、ターゲッティングさせて、安定化させて、徐放化させて届けるためには、薬自体を包む材料が必要です。宅急便で荷物を送るときに包む緩衝材のようなものです。ここでは、細かい粒子の薬を包む材料をいくつか紹介します。

微粒子材料

エマルション、リポソーム、高分子ミセルの微粒子比較図(図解で学ぶDDS参照)

この3つの材料の単位はnm(ナノメートル)です。ナノと言えば1mmの1000分の1のさらに1000分の1です。薬の分子サイズは10nm以下であることが多く、このサイズでは腎臓から尿として排出するのが速いため、長く体内にとどまることができません。一方、微粒子のサイズが400nm以上になると今度は体の免疫機構が働き、異物排除により体外へ素早く排除されてしまい、薬としての効果を発揮することができません。よって、ドラッグデリバリーシステム(DDS)製剤としては、一般的に数10nm以上で400nmを超えない大きさにすることが必要になります。

リポソーム

リポソームリポソームとは、私達の体の細胞膜と同じように多重分子構造をもつ、100nm~130nmほどの物質です。多重構造では、水に溶ける物質を水の層の中に、油に溶ける物質を油の層の中に閉じ込めることができます。

この便利なリポソームのサイズはナノサイズです。この小さなカプセルの中に薬を内包して、体の中に取り込み、浸透させます。体の中の細胞膜というのは水を透過させないバリアになっているので、タンパク質や遺伝子などを中に入れることができませんが、リポソームは細胞膜とよく似た構造なので、体内に入ると、細胞膜にうまく融合し、中身の水に溶けた有効成分が細胞内に取り込まれるようになります。

DDSの考えで言えば、有効成分をリポソームの中に取り込んで、薬を安定化させ、バリアゾーンを通過させることができます。リポソームは、卵黄や大豆のレシチンからつくられ、遺伝子医療などで活用されています。この素材は、今後ますます重要視される可能性が高いです。

高分子ミセル

高分子ミセル石鹸のように油と水を同時に取り込むことができるものをミセルといいます。

高分子ミセルは、水に溶ける部分と油に溶ける部分を併せ持っています。リポソームよりも比較的新しく研究が始まりました。

大きさは10~40nm程度ですが、リポソームよりも油に溶ける物質を中にたくさん入れることができます。そして薬の放出速度のコントロールがしやすいといった特徴がある反面、水に溶ける物質を入れることが難しかったり、高度な設計技術が必要であったりと、リポソームに比べて有利な点と不利な点があるため、中に何を入れるかによって使い分ける必要があります。

リポソームや高分子ミセルで包むと、薬の血液中の滞在期間が長くなります。体内にとどまっている時間が長くなるということは、それだけ薬の治療効果を持続することができるようになるということです。

高分子ミセルはポリエチレングリコール(PEG)などから作られます。

エマルション

エマルションエマルションは、マヨネーズや木工用接着剤のようなどろっとした液体で、水と油のように、通常は均一に混ざり合わない2種類の液体を混ぜることができ、さらに、中に閉じ込めた薬を徐々に放出することができます。大きさは130nm~180nmで、リポソームより作りやすいという特徴があり、大豆油などから作られます。

シクロデキストリン

シクロデキストリンシクロデキストリンとは、シクロ(環状)とデキストリン(オリゴ糖)の合成語です。原材料はジャガイモやトウモロコシのでんぷんから作られています。ブドウ糖が連なってできたオリゴ糖が環の形になっています。大きさは1nmくらい、リポソームや高分子ミセルよりもさらに小さなナノ粒子です。また、シクロデキストリンの内側は油に溶ける物質を閉じ込めることができ、外側は水に溶けやすいので、油分を保持しながら水になじむことができます。

この物質は、薬を包んで安定化させ、バリアゾーンを通過して徐放するという優れた機能を有しています。

ハイドロゲル

ハイドロゲルゲルとは、寒天やゼラチンのような液体と固体との中間の形態をもつ物質です。古くから食品やソフトコンタクトレンズなどに、幅広く利用されてきました。水に溶ける物質を閉じ込めることができるゲルをハイドロゲルと言います。水をベースとしているので体によくなじみます。その高い加水分解性と生体吸収性により、薬の体内での徐放材料としての応用研究が幅広く行われています。生体に近い材料であるハイドロゲルは、細胞を制御し、DDSとして利用するのにとても有効な物質です。

このハイドロゲルは、ゼラチンからつくられ、上述した高分子ミセルなどの薬と混ぜた粒子を封入し、体内で徐々に放出させます。

次に、ドラッグデリバリーシステムのバリアゾーンの通過、吸収改善について解説します。

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参考文献

  • 橋田充、高倉善信:「図解で学ぶDDS」 じほう(2010年)
  • 永井恒司:「DDSの基礎と開発」シーエムシー出版(2006年)
  • 岩田博夫、加藤功一、木村俊作、田畑泰彦:「バイオマテリアル」丸善出版(2013年)
  • 田畑泰彦:「ますます重要になる細胞周辺環境(細胞ニッチ)の最新科学技術」メディカルドゥ(2009年)