薬を体内でちょうどいい濃度でとどまり、持続的に効果を発揮するためには、徐放化という技術が、DDSの中でも極めて重要です。薬を体の中で徐々に放出する「徐放化」の考え方を取り入れたものは、すでに多くの薬で実用化されています。ここでは、徐放化についてもう一歩踏み込んで解説します。

徐放化の応用例

腸

徐放化を利用した薬で最も歴史が長いのは抗がん剤です。抗がん剤は、そのままの状態では粒子が小さく水に溶ける物質が多いので、体内に取り込まれてもがん細胞に到達せず、尿として排泄されてしまいます。そのようにしないために、体内にとどまって徐々に放出するように工夫されています。

また、抗菌剤、抗ウイルス剤、抗生剤、タンパク質、核酸薬などでも徐放化がすすめられています。

その他化粧品でも、一度塗ったら丸一日細胞が活性化するように、細胞増殖因子が徐々に放出されるように設計された製品があります。

芳香剤や消臭剤なども、長い間にわたって香りを持続するために、DDSの徐放化技術が応用されています。

徐放化の方法

微粒子材料

微粒子材料の例

薬の粒子を基本的にはDDSの材料で包みます。この材料が体内で溶けるように設計します。材料にはどのようなものがよいかというと、
1.    薬を中にためることができる
2.    薬の放出を調整することができる
3.    薬を放出し終わった後はすぐに排出されるか、吸収される
こういった特徴をもつ材料で作ります。放出速度はある程度計算式で求めることができます。

飲み薬のカプセルでいえば次のようなものがあります。

徐放カプセルすぐに溶ける薬、少し時間がたってから溶ける薬、だいぶ時間がたってから溶ける薬を一つのカプセルに複数混ぜておきます。このようにして徐々に体の中で薬が溶けて放出されるようにしています。

腸溶性カプセル胃で溶ける材料で包んだ薬、腸で溶ける材料で包んだ薬を混ぜ合わせています。胃と腸ではpHが違うので、この性質を利用して、胃で溶けるか腸で溶けるか設計します。口から飲んだ後は胃で1~3時間、小腸で3~5時間とどまるので、腸で溶ける材料は最初の約3時間は溶けず、時間がたって小腸に届いてから放出するようになります。

高分子カプセル高分子で薬の粒子を包んで、さらに外側のカプセルも高分子で包み、徐々に溶けるように設計したタイプです。

錠剤でも様々なタイプがありますが、ここでは気管支ぜんそくの治療薬であるテオフィリンを含んだ3タイプの徐放性錠剤を例として紹介します。

テオドール錠

こちらはテオドール錠。薬を含む核をコーティングした徐放性のコア部を、すぐに溶ける錠剤で固めています。飲みこんだ後は外側はすぐに溶け出して、錠剤が溶けると共に、中に入っているコア部が出てきます。そして徐々にコア部からテオフィリンが溶け出してきます。

テオロング錠

テオロング錠は、薬を含む核をコーティングした徐放性の顆粒を錠剤にしたものです。胃の中ですぐに崩壊して、中のコアが放出されます。そして徐々に溶け出していきます。テオドール錠と異なり、徐放性顆粒部分以外に薬は含まれていません。

ユニフィルLA錠

ユニフィルLA錠は高級アルコールのヒドロキシエチルセルロースの中にテオフィリンを分散させています。このアルコールに水が入ってくるとゲル状になってきて、徐々にテオフィリンを放出していく仕組みです。

また、飲み薬、注射以外も、体の外部からの刺激を与えて薬を放出するタイプのものも出てきました。続いて、光を当てるとがんが治る!?外部刺激によるコントロールドリリースを紹介します。

 

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参考文献

  • 橋田充、高倉善信:「図解で学ぶDDS」 じほう(2010年)
  • 永井恒司:「DDSの基礎と開発」シーエムシー出版(2006年)
  • 岩田博夫、加藤功一、木村俊作、田畑泰彦:「バイオマテリアル」丸善出版(2013年)
  • 田畑泰彦:「絵で見てわかるナノDDS」メディカルドゥ(2007年)