脳は、感情・思考・生命維持、その他一切の神経活動を統率する役割を担っています。ここでは脳の働きについて見ていきます。

脳の働き

脳の働き

脳は体のあらゆる部分を統率する重要な部分ですが、重さはわずか1400gほどしかなく、固いゼリーのような質感です。脳には「大脳」「小脳」「脳幹」と、主に3つの主要部位があります。大脳は、記憶、問題解決、思考、感情、動作に関与しています。小脳は運動機能を調整します。脳幹は脳と脊髄をつなぎ、呼吸、消化、心拍、血圧など、自律神経の機能を制御しています。
脳の重さは全体の2パーセントにすぎませんが、エネルギー消費は全体の18パーセント、ブドウ糖は全体の50%を消費すると言われています。

脳とアルコール

アルコールで委縮した脳

アルコールを連日飲んでいると、だんだんと脳が縮んでくることがわかっています。脳委縮と言われ、症状が進むと正しい判断をしづらくなります。MRIで断層写真を見ると、脳に隙間が見えるようになります。年をとると脳は委縮していきますが、アルコールをとることによって、このスピードが10~15年早く進行することがわかってきました。

脳梗塞

脳梗塞

脳の血管が詰まり、その先の細胞に栄養が届かなくなって、細胞が死んでしまう病気が脳梗塞です。突然意識障害が起きたり、半身のマヒが起こったり、言語障害が起きたりします。脳の細胞が死ぬと体全体を統率して指示を出すことができなくなり、体を思うように動かせなくなります。発症から3~6時間で死に至ると言われており、その前に早期治療を行えば、脳細胞が助かる可能性があります。

アルツハイマー病

アルツハイマー病

アルツハイマー病は日本で60万人、世界で1800万人いるといわれる認知症の一種です。記憶力が低下したり、時間、場所、人物に見分けがつかなくなったり、計算力、判断力、言語能力が低下したりします。原因はまだ解明されていませんが、患者の脳内において、神経伝達物質のアセチルコリンが減少することがわかっています。

パーキンソン病

パーキンソン病

パーキンソン病はアルツハイマー病の次に頻度が高い脳の病気です。日本では14万人の患者がいると言われています。中脳に存在する黒質という部分の神経細胞の数が減少することが原因です。これによって、黒質で作られる神経伝達物質=ドーパミンが不足し、手足のふるえ、歩行障害、姿勢障害などの症状を引き起こします。近年、有効な新薬が開発されていますが、根本治療ではないため、症状が徐々に進行するケースもあります。

脳の再生

脳の再生

脳は、一度損傷すると再生しないと言われてきました。しかし脳科学の発達により、脳を治療で再生することが可能になってきました。脳内で壊れてしまった細胞に対して、神経栄養因子で助ける、新たに細胞を移植するといったアプローチがあります。

腸骨

脳梗塞によってダメージを受けてしまった細胞に、骨髄の細胞を移植することによって治療する治験が、札幌医科大学で始まっています。骨髄の中には骨髄間葉系幹細胞と呼ばれる、いろいろな細胞に分化できる幹細胞があります。この細胞は、神経細胞やグリア細胞など、脳の細胞に分化できることが明らかになっています。患者自身の腸骨から骨髄細胞を抽出し、2週間ほど培養したのち、静脈注射を行います。現在、この方法で神経学的に有意な改善効果が見られています。

2008年、マウスのiPS細胞から作り出した神経細胞を使い、ドーパミンを分泌する物質に分化させ、パーキンソン病のラットに移植しました。移植した細胞からドーパミンを分泌することが確認されており、ラットの脳の再生治療をすることに成功しています。また、2013年にはヒトのiPS細胞からドーパミンを分泌する神経細胞をつくり、パーキンソン病のサルに移植することで、サルの治療に成功しています。霊長類のサルで成功をおさめ、次はヒトにおいての再生医療も期待されています。

アルツハイマー病の治療2013年、アルツハイマー病の患者のiPS細胞をつくり、大脳の神経細胞に分化させて調べたところ、アミロイドベータというタンパク質が蓄積していました。この物質が神経細胞を傷つけて死滅させることがわかってきたのです。このアミロイドベータを阻害する薬や、サバやイワシなどの魚類に多く含まれるDHAを投与することで、脳の細胞死を防げるようになります。現時点では、神経細胞を再生させるまでは至っていませんが、iPS細胞によって原因がより明らかになり、病気の進行を遅らせることが可能になってきています。

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参考文献

  • 八代嘉美、中内啓光:「再生医療のしくみ」日本実業出版社(2006年)
  • Newton 別冊:「夢の再生医療を実現するiPS細胞」ニュートンプレス(2012年)
  • 札幌医科大学 脳梗塞に対する再生医療の治験について http://web.sapmed.ac.jp/jp/news/topics/03bqho00001xe7fj.html
  • 理化学研究所 脳科学総合研究センター(理研BSI) http://www.brain.riken.jp/jp/