骨は、人間の体において、体の保護、姿勢の維持、筋肉を用いた運動など、様々な役割を担っています。一見固くてじっとしているように見えますが、活発に新陳代謝をしていて、一定の量が保たれています。骨折が自然に治癒するのはこの再生能力によるものです。骨がかけた場合には自分の別の部位から骨を持ってきて移植する自家移植ができますが、広範囲にわたる場合は自分の骨で賄うことが難しいので、再生医療の技術を用います。

胸骨の再生

胸骨正中切開心臓手術の際には、通常胸骨を縦に切断して胸を開く必要があります。心臓外科医はむき出しにされた心臓を前に、傷つけたら命を失う緊張感のもと手術を行いますが、その後胸を閉じ、数本のワイヤーで胸骨を固定します。まれにワイヤーがゆるんでうまく骨がつかなかったり、その部分が感染を起こしてしまうことがあります。骨が戻るまで2~3か月かかりますが、その間に感染症にかかると、致命的な合併症を引き起こします。確率は全体の2%程度といいますが、かかってしまうと死亡率が高く、せっかく心臓手術が成功しても骨接合部の感染のために命を失っては本末転倒です。そこで、骨の再生が速める方法の一つとして、骨の新生効果のあるbFGF(グロースファクター)を投与します。bFGFは、そのままでは体内に長時間とどまれないので、DDS材料のハイドロゲルに包んで徐放することで、骨の再生期間を短くすることができます。

頭蓋骨の再生

頭蓋骨頭蓋骨は他の骨に比べて再生能力が低い組織です。脳手術する場合には頭蓋骨を切断して開く必要があります。その際にあけた数mmの穴もそのままでは再生しないことが多いです。必要な場合にはセラミックやチタンプレートで塞ぎますが、体にとっては異物となるので、化膿する恐れもあり、あまり望ましくはありません。そこで、ここでも骨の成長因子を使って骨の再生をはかることが試みられています。

軟骨の再生

培養軟骨スポーツで急激に膝に力がかかり、膝の半月板が損傷してしまうことがあります。骨同士が接する部分には骨同士が直接こすれ合わないようにクッションがあります。それが関節の「軟骨」で、なめらかで弾力のある組織でできています。この軟骨が傷んだり、すりへってしまうと、軟骨には血液も神経もないので、自然に再生することができません。

しかし、軟骨細胞には増殖する能力があります。そこで、患者の正常部位の軟骨組織を取り出して、軟骨細胞を培養し、移植することができるようになりました。約4週間で培養できます。ジャパンティッシュエンジニアリング社が事業化しています。

3Dプリンター+iPS細胞

耳耳の発育がうまくいかない患者に対して、耳の軟骨の型を3Dプリンターで作製し、そこにiPS細胞を注入して耳を再生する研究が始まっています。これまでは肋骨の軟骨部分を取り出して移植用の骨をつくっていましたが、耳の輪郭が複雑で、耳の形を再現するのが難しかったようです。3Dプリンターを活用して合成素材で耳の形を正確につくり、iPS細胞で軟骨細胞を作製するという研究です。実用化まで10年はかかると言われています。

続いて心臓の再生です。

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参考文献

  • 八代嘉美、中内啓光:「再生医療のしくみ」日本実業出版社(2006年)
  • 田畑泰彦、岡野光夫:「ティッシュエンジニアリング2007」メディカルドゥ(2007年)
  • 田畑泰彦:「進み続ける細胞移植治療の実際上下巻」メディカルドゥ(2008年)
  • 田畑泰彦:「ますます重要になる細胞周辺環境の最新科学技術」メディカルドゥ(2009年)
  • 岩田博夫、加藤功一、木村俊作、田畑泰彦:「バイオマテリアル」丸善出版(2013年)